和紙の洞窟@LIXILギャラリー2017

2017年7月6日から9月26日まで京橋のLIXILギャラリーにて開催された「クリエイションの未来展 高知県梼原町の和紙職人 ロギール・アウテンボーガルト×建築家 隈研吾」には、全国からたくさんの方にご来場頂きました。誠にありがとうございました。

自家栽培した原料を使って漉いた和紙を使い、梼原にゆかりの深い世界的な建築家隈研吾氏とのコラボレーションで、東京にて展示会を開催できたことは、これまでのロギールの紙作りの大きな節目となりました。

photo:Takahiro Fukumori

以下は今回の展示会に向けて寄せられた隈研吾氏とロギールのコメントです。

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僕が高知県の梼原町を初めて訪れたのは1987年になります。当時の東京の建築は“形の建築”で、そうではない建築を模索しているときに、梼原で色々な職人さんや素材と出会えました。多くの職人さんに出会い、自分の知らない技術や素材を教わりました。梼原で建築の奥深さ、豊かさを知り、以降の僕の建築の哲学のベースが作られました。

梼原での仕事の際にロギールさんと出会い、それ以降も協働を続けています。梼原の水と自家栽培している素材から生み出されるロギールさんの和紙は力強く、繊細で、梼原の木と見事な調和をみせてくれます。今回の展示ではロギールさんの和紙をつかった柔らかくも力強い空間を作りたいと考えました。天井や壁に和紙を使い、それらにシワをつける特殊な加工をすることで、和紙でつくられた洞窟のような空間を生み出すことができました。職人の技術を駆使した空間を通して、技術や素材の奥深さ、豊かさを伝えるのが、この展覧会の目標です。

隈研吾

初めて和紙を手にしたとき、柔らかく温かく、薄いながらも力強く、透き通ったそのありように、そしてなによりもその信じられないほどの美しさに、私は心を打たれました。西洋の手透き紙によく見られるいわゆる「鎖線」、つまり製作過程で金属の簾からできる透かし模様があるかどうか、光を透かして見ようと和紙を持ち上げた瞬間、格子状の簾の跡があるのが確かにわかりました。和紙の場合、それは竹や草からつくものです。しかし私が最も驚いたのは、他ではあり得ないような透明感と「自由に舞い踊る」神秘的な繊維の姿で、それは私には見たこともないものでした。和紙から透けて見える光は、教会のステンドグラスから透けて見える光を思わせました。

この紙が、書いたり印刷したり絵を描いたりするための面を提供する単なる材料ではなく、それ以上のものであることが私にはわかりました。その瞬間からずっと私は「なぜ和紙はこれほど美しいのか」「なぜ多くの人は和紙をやさしく温かく癒しを与えるものと感じるのか」と問い続けてきました。その後、その秘密の根はいわゆる「里山」にあるのだと知りました。その文化と伝統に根ざした結びつきが安心感を与えます。そのため和紙は今日ますます評価されつつあるようです。

私はまた、日本ではかつて衣服用や内装用として紙が日常生活で使われていたことも学びました。障子や襖など、あらゆる種類のさまざまな紙が使われており、全ての季節ごとにそれぞれの紙があるとも言えるでしょう。これは本当に驚くべきことです。障子を通して拡散する光や、着物や雨合羽に使われた粗めの紙について考えただけで、和紙が人々の生活に与えてきた直接的な影響が想像できます。

水はよい和紙を作るために最も重要な原料だとよく考えられています。畑から紙の完成まで和紙づくりのほとんどの工程で水が使われているからです。しかし私は原料を忘れてはいけないと思います。多くのさまざまな原料が長い年月、ときには何世代にもわたって丹念に栽培されています。畑と水に対する私たちの心構えが繊維の、ひいては紙の質にはきわめて重要だと思います。

伝統的な和紙を作るためには機械も化学薬品も必要ありません。綿パルプ製造機であるオランダ・ビーターを使って西洋式の紙づくりを始めて本当にわかったのは、伝統的な和紙技術が地元の自然環境とつながっているということです。和紙はほとんど、繊維や木、竹、草など天然の素材だけで作られます。だからこそ、健やかな自然環境と地域社会がなによりも重要なのです。

最終的に、土が紙になります。隈研吾さんからこの和紙の「洞窟」プロジェクトで一緒に仕事をしようとお話をいただいたとき、私たちは楮畑の土の研究を再開したところだったので、うれしい驚きでした。違う角度から土の性質について考察を深める機会を得ることができました。

このプロジェクトのために私は伝統的な和紙、西洋のコットンペーパー、そして古い技術を融合させて使用しました。そのため、このプロジェクトは私にとっては、全く異なる種類の繊維と異なる文化から生まれた技術とを使って、これだけ大きな規模で制作をするすばらしい機会でもあります。できる限り互いに異なる繊維の性質がわかるように、また繊維同士の類似と違いをめ、それらが互いに溶け合ってひとつになるように努めました。

どうぞごゆっくり和紙の「地下」世界をお楽しみください。

ロギール・アウテンボーガルト

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