三椏の全てと、かみこや
三椏という植物は知っていますか?
古代から日本の文化になじんできながら、和紙の原料としては比較的新しい素材です。
この記事では三椏の歴史や使い道、生産方法について書きました。三椏について詳しくなって、和紙の可能性と奥深さを感じて下さい。
目次
ロギールと三椏の出会い
1981年に、私たちが初めての工房を高知県の旧伊野町に構えたときには、まだ三椏の自家栽培はしていませんでした。
近所の農家さんが苗を栽培しているのを見ながら、いつかは楮だけでなく、三椏もやりたいと思っていました。
梼原と三椏
三椏の栽培を始めたのは、今かみこやがある梼原町への移住がきっかけです。
植林になっているところは全て三椏畑だった
現金収入は炭焼きと三椏だった
収穫時期は山の上にカマドをついて、泊まり込みで蒸し剥ぎ作業をした
と言われるぐらい三椏栽培は梼原で大きな役割を果たしていました。戦後、紙幣用の原料などとして三椏栽培がすごく奨励されていたのです。
でも私たちが梼原町に移住した1992年当時には、三椏を生産している農家さんはすでに1件だけになっていました。
そこでロギールは、自分のやりたい紙漉きと、新しく住み始めるこの梼原町とのつながりを強くするためにも、三椏の自家栽培を始めようと思ったのです。
奈良時代から登場する三椏
三椏は古代から日本の文化の一部となってきました。縁起が良くて、春の早い時期に花が咲く「サキクサ」と呼ばれていて、万葉集にも登場します。
春されば まず三枝(さきくさ)の 幸(さき)くあれば 後にも逢むな 恋ひそ吾妹
万葉集 (少し調べたのですが、作者は柿本人麻呂で間違いないのでしょうか、ご存じの方教えて頂けたら嬉しいです)
「春になれば咲く三椏のように、あなたが幸運で無事でいればまた会えるから、恋しがらないでください」(訳by陽平)
美しくて毒がある
和紙の原料としての三椏は、楮や雁皮に比べると比較的新しい素材です。最初は戦国時代に、楮と混ぜて使われていたようです。
需要が大きくなったのは明治時代。紙幣に使われるようになってからです。梼原町での三椏生産が増えたのもこの頃です。繊維が細かくて印刷に適しているので、タイプライター用紙などとしても需要がありました。
三椏には少し毒があって虫食いが起きにくいので、美しい光沢があることあって証書にぴったりです。地元の小学校での証書製作はいつも楮と三椏を半々ぐらいの原料で製作しています。
三椏の和紙の用途
生活用途の多い楮の和紙に比べて、三椏は美術用としての使い道が多いです。
書道・版画・印刷用紙
三椏は楮より繊維が短いので、墨などの滲みが少なく、紙のキメが細かいので印刷が鮮明になります。書は特に最高級のかな文字用紙として有名です。
戦争で中国から書道用紙が入ってこなくなった時に、日本産の書道用紙の開発としても三椏が使われるようになりました。
折り紙用紙
三椏を入れた折り紙用の紙は、ロギールが友人の折り紙作家マナ・オリと一緒に開発しました。
和紙ならではの薄さと丈夫さ、そして三椏紙ならではのハリが細かいデザインを可能にしています。
枝は華道の素材などに
三椏の枝は白や金色に染められたものがよく華道の素材として使われます。それ以外にも、その独特の枝ぶりとしなやかな雰囲気でいろいろなアートやクラフトに使われます。
種から紙の原料になるまで
三椏の栽培は苗を仕入れて移植するのが一般的ですが、かみこやでは種から発芽させて栽培しています。
1粒の種が和紙の原料になるまでの行程を見ていきましょう!
種採取
三椏の種は6月頃に、しっかりと熟した種を木から採取します。画像の種はもう少しですね。
種まきは次の年の春なので、それまで保存しておきます。かみこやではシュロの葉にくるんで地面に埋めるという、伝統的な方法で保存しています。
種まき・虫とり・間引き
4月ごろに、保管していた種を撒きます。
虫が芽を食べてしまうので、芽が出て最初の3週間ぐらいは、2日に1回ぐらいで虫取りをします。
その後、成長に合わせて間引きをして、理想的な大きさ、本数に育つように調整します。
なお、苗の販売をしておりますので、ご興味のある方はこちらのブログでご覧ください。
定植
2月の下旬から3月に定植をします。三椏は結構繊細であえなく枯れてしまうこともあるので、1か所に3本ずつ、1.5m間隔ぐらいで植えるのが、和紙原料栽培のためにはお勧めです。
収穫、蒸し剥ぎ
11月ごろ、葉っぱが落ちたら収穫の季節です。
和紙の原料として丁度良い、3年生と4年生の枝を選んで刈り取り、蒸して皮を剥ぎます。
枝別れが邪魔をしてまっすぐに引っ張っても剥げないので、壁に打ち付けた道具にひっかけて剥ぎます。
その後しっかりと干したら原料となります。
この後の和紙作りの行程は、また別に機会に!
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