和紙作りと自然:日光
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「伝統手漉き和紙からのメッセージ」
日光も紙漉きには欠かすことのできない自然の要素です。手漉き和紙での日光の役割として一番初めに思い浮かぶのが漉いた紙を板に張り付けて干している光景ではないでしょうか?
長い時間強い日を当てると紙が板からはがれることがありますので、状態を見極めながら干します。紙が温かくなったらだいたい干しあがりです。
それから蒸し剥ぎの直後やヘグル作業の後にも原料を干します。
剥いだ直後の黒皮が残った状態の原料はカビが生えやすいので、すばやくしっかりと乾かすのが重要です。天気が良いと2日ほどで乾いてしまうのですが、天気が悪い日が続くと何日も管理しないといけないので手間が全然違います。
へぐった後も濡れたままが続くとやはり原料が傷みますので、できるだけ素早く乾かして、保存します。
伝統的な和紙作りに特徴的な日光の利用方法として、天日漂白があります。濡れたセルロースに日光が当たると、白くなります。紙の繊維だけでなくても、日に長い時間さらされているものは色があせて白っぽくなりますよね。一番この役割が発揮されるのは、消石灰で煮た原料を流水に晒す工程です。
天日漂白にかける時間は原料の質、目的の紙の種類、日光の強さなどで変わります。逆に紙を白くしたくないときは、晒し場に蓋をしたり屋内で晒したりして、日に当てないようにします。白い紙を作りたいときは、晴れの日を狙って作業をします。
板干しの際にも紙は漂白されます。湿った紙に強い日差しが当たるとあっという間に紙は乾いて、同時に白くなります。白い紙が効率よく作れる高知県の日差しの強さは、土佐和紙が発展した理由の一つかもしれません!
あと、当たり前と言えば当たり前なのですが、太陽の明るさも紙漉きに役立つポイントです。チリトリの際や紙を漉いているときには、繊維の中から細かいゴミなどを見つけるために良い明るさが必要です。そのためこの二つの作業場所は窓に向かって作られている工房が多いです。
もちろん電気の照明も使いますが、明るさが足りなかったり、照明と自分の位置で水面が反射したりとなかなか微妙で、やはり一番良いのは窓から取り入れた外の明るさです。直射日光は避けたいので、一番いい光は部屋の北側の窓からの明かりだと思います。